過去編 第四章 「明けぬ夜の寝物語」

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 ……私は、どうすればいい?  たとえ尊厳を打ち砕かれたとしても、我々は異端の神として二人きりの存在なのだと諭されれば、それを信じ、あれを思いやって生きてゆくしかないのか?  これも父の思うつぼなのだろうが、すでにあの甘美な“ほどこし”なしには生きてゆかれぬ体にされてしまった。  麻薬のように神司をちらつかされ。  私は従い続けるしかないのだろうか。  精神が血を流していると、もう随分前から気づいているのに。  あれは、一体、何なのだろう…?  強大な権力を持って私の前に立ち塞がり、飴と鞭を駆使して私を堕落させたあの存在は?  分からない。父はたぶんまだ、狂気から立ち直っていないのだ。  だから……その心を若輩の私ごときが、推し量れるはずがない。  あいしているよ。  私にそう云いながら生母に似た継母(セファニア)を連れて来た父と、  幼かった私を蹂躙した過去の父の姿とが、  瞼の裏に重なっては消え、消えては浮かんだ。  そうして私は古い傷を掻き毟るように、心の瘡蓋(かさぶた)を剥がし続けてゆく……。
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