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《序文》
創世神はかつて三界を創った。
天上界・地上界・冥界である。
創世神は自分の子供たちである神々を天上界に住まわせ、
人間たちを地上界に住まわせ、
魔族と異形の怪物たちを冥界に住まわせて、
ほかの世界を創造するために別次元へと去った。
去り際に創世神は
『神々の中から一人を冥界に遣わせるがよい』と
言い残したので、神々は、兄弟のうちで
ただひとりだけ黒髪紅瞳をしていた闇の神を、
異端とみなし冥界を治めさせるべく堕とした。
ただひとり冥界に堕とされた闇の神は孤独に打ちひしがれ、
永きにわたり天の同族たちを呪詛し発狂に至るも、
ただひとり彼を心配して天から降りてきた
女神ティアーナの献身により、正気を取り戻した。
闇神は冥界を統べるという己の使命を思い出し、
醜い争いを繰り返していた魔族らを統一して、
冥界の王となった。
ふたりは愛し合い、女神ティアーナは闇神の司を
受け継ぐ嗣子を孕んだが、
冥界の瘴気が天の女神には毒であったのか、
御子を産むと引き換えに消滅し、
創世界へと転位してしまう。
ほかに同族のおらぬ地底の黄泉世界で、
ふたたび訪れる孤独への恐怖から、
冥王は遺された王子に
異常なまでに執着し、
常軌を逸した愛情を注ぐ。
己の持つ『闇』と『死』という神司のうち、
『死』の司を御子へ分け与え、
懇ろに育てた。
うつくしい黒髪の御子は、
父神しか同族を知らぬまま、成長し、やがて―――
『つがいの神剣』
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