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父があのあと戯れに、眠る自分の髪に挿していったのだろうか。
先っぽが少し丸くなっている。
途端、王にされた加虐的な行為が思い出される。
「……っ」
ナシェルは思わず、その蝶のピンを床に投げ捨てていた。
『欲しいと云っていただろう。挿してあげる――さあ、力を抜いて、脚を、拡げなさい』
父は、閨の中ではとても意地悪だ……。
父の居室で見つけたその可愛らしい品物に、ナシェルはなぜか強く惹かれた。丁寧に、絹を敷き詰めた箱にしまわれていた。最初は、髪飾りだと思った。
ふだんなら装飾品などに興味を示すことはないのだけれど。
父の所有物としては異質なそれを、自分にくれとねだってみせたのは確かだ。
ただ自分の所持品にしたかったのだ。鍵のかかる箱に入れて、大切に仕舞ってみたかった。もう宝物集めをするような年齢でもないのに――、子供じみた所有欲がふと湧いてきたのだ。
ただそれだけだったのに。
『それが欲しいのか。……では、今夜、いい子にできたらな』
父はナシェルの頭に手を置いて意味深に微笑んだ。ナシェルは寝所に王の訪いがあることを悟った。王は暗に「伽の褒美」としてならば下賜してよいと、匂わせたのだ。
そしてその晩―――。
父は『飾ってあげる』といってナシェルを寝かせ、もうしとどに蜜を溢れさせている尖端部にそれを挿し込んだ。
『あああ……――ッ!?』
尿道の小さな孔は、ナシェルの体中でまだ唯一、慣らされていない器官で、あまりの強烈な異物感と痛みに彼は全身をのけぞらせて叫んだ。
だが王はナシェルの中心に手を添えて蝶のピンを中程まで挿し込む。
『やあっ!……父上、これ……?!』
『これは、こうやって使う物だよ。そなたのために矮人族の匠に造らせた』
まるで下腹に蝶のとまったようなその姿を、王は目で愉しみ……、ナシェルの泣き喚く声に、さらに欲望を掻き立てられたようだった。
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