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「何ですか……それは?」
「力だよ。神司だ」
ナシェルは濃藍の双眸を数回瞬かせた。
「……神司……?」
何だろう。精霊を使ったりする力のことだろうか?
「そうだ。そなたも神として、もっと多くの力を得たいと望んでいるだろう」
王は優しく微笑む。
そんなものを、あげたり貰ったりすることができるのだろうか?
自分はそうした力など、欲したことはなかったのだけれど。
父がくれるというなら、貰わなければならないのだろう。それがいくら恐ろしいものであったとしても。
それに、実際には、父がくれるものは何であろうと少し嬉しい……。
「でも、どうやって………?」
「方法がある」
王は背後の寝台にナシェルを導きながら指を立てた。
「今から、その方法を試してみよう。なに、いつもしていることとそれほど大差はないのだがな」
何が起こるのかと思わず身構えるナシェルを、寝台に腰掛けた王は緩慢な動作で、しかし抗うことを認めぬ剛さで捕まえた。
「おいで、シャフティエル。これからそなたに余の力を注いでやろう。そなたは、その不可侵な尊さはそのままに、余の神司を浴びることで、これから永い時間をかけて少しずつ余に近づいてゆくのだよ」
ナシェルは抗いがたい強さで腕を引き摺られ、寝具の上にぱったりと倒れ伏した。
「……!」
驚きに、息が詰まる。
軽く結われていた髪が解け、ぱさりと広がった。
仰向けに寝かされ、瞑っていた瞼を開けると、至近に父の秀麗な相貌がある。
「父、上………」
ナシェルは愕然と、愉悦の表情を浮かべる王を見上げた。
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