過去編 第一章 『愛 証』

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「何ですか……それは?」 「力だよ。神司だ」  ナシェルは濃藍の双眸を数回瞬かせた。 「……神司……?」  何だろう。精霊を使ったりする力のことだろうか? 「そうだ。そなたも神として、もっと多くの力を得たいと望んでいるだろう」  王は優しく微笑む。  そんなものを、あげたり貰ったりすることができるのだろうか?  自分はそうした力など、欲したことはなかったのだけれど。  父がくれるというなら、貰わなければならないのだろう。それがいくら恐ろしいものであったとしても。  それに、実際には、父がくれるものは何であろうと少し嬉しい……。 「でも、どうやって………?」 「方法がある」  王は背後の寝台にナシェルを導きながら指を立てた。 「今から、その方法を試してみよう。なに、いつもしていることとそれほど大差はないのだがな」  何が起こるのかと思わず身構えるナシェルを、寝台に腰掛けた王は緩慢な動作で、しかし抗うことを認めぬ剛さで捕まえた。 「おいで、シャフティエル。これからそなたに余の力を注いでやろう。そなたは、その不可侵な尊さはそのままに、余の神司を浴びることで、これから永い時間をかけて少しずつ余に近づいてゆくのだよ」  ナシェルは抗いがたい強さで腕を引き摺られ、寝具の上にぱったりと倒れ伏した。 「……!」  驚きに、息が詰まる。  軽く結われていた髪が解け、ぱさりと広がった。  仰向けに寝かされ、瞑っていた瞼を開けると、至近に父の秀麗な相貌がある。 「父、上………」  ナシェルは愕然と、愉悦の表情を浮かべる王を見上げた。
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