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ナシェルはたびたび父王の寝処に呼ばれることがあった。
もうナシェルは添い寝を必要としない年ごろであるのに、そのようにされるのは、父は父なりに、母を知らぬ自分に、母性の代理としての父性を――少しずれてはいるが――、注いでいるつもりなのだろうと、幼なながらにナシェルは思っていた。
王は傍から見ればいささか異常なほど過分な父性を発揮し、王子を慈しみ、寂寥を慰めるための寝物語を語った。実際には、唯一己の元に遺された“同族”であるナシェルを愛でることによって、寂寥を癒されていたのは冥王のほうだったのだが、ナシェルにはそれを知る由もなかった。
……彼がごく幼い時分は、そうして同衾するだけであったものの、近頃では王の添い臥の目的が明らかに別のところにあるとナシェルは気づかされていた。600歳ごろから王は徐々にだが、待ちかねていたように彼の躯をゆるやかに、弄びはじめたのだ。
まだ性を知らずにいた幼神は、それ以降「手ほどき」という聞こえの良い名のついた愛玩によってさまざまな角度から感受性を高められ、精通前から王の指姦に慣れるよう乳首や局部を開発され、王の手により精通を成し遂げさせられていた。
王子の躯はいま、性愛の何たるかをつぶさに覚え込まされていく過程にあるのだ。
それはもう最終段階といってもよい。
そしていよいよ今宵、愛の教えの終着点としての行いが待ち受けているのだが……、
まだ指戯と口淫しか施されたことのないナシェルは、まだそのことを、与り知らぬ。
蒼い眸をぽっかりと見開いて王を見上げる。
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