死が二人を分かつまで

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アゾットはそれこそ寝食も忘れて死霊術に関する書物を読み漁った。だが、彼女が壁に突き当たるのにそう時間はかからなかった。それも当然で、死霊術は本来魔術に属するものであり、個人の資質に大きく左右される類いのものであったからだ。『錬金術』は『魔術』から発展したものであり、個人の資質による部分を補うために種々の儀式や道具、薬を用いるものだ。アゾットは優れた錬金術師であったが、錬金術の才能とは学問のセンスに近いものであり、魔術の素質とはまた別のものだった。 彼女は考えた。死霊術に長けた者を探さなければならない、と。……諦めるという選択肢は彼女にはなかった。彼女は再び闇市場を訪れ、死霊術師の研究者に伝手があるものを探した。だが、皆一様に首を横に振った。錬金術都市に住んでいる魔術師はそう多くないし、そもそも自ら禁呪を扱う死霊術師だと名乗っている者などいない。或る者は、死霊術師を探したければ優秀な魔術師が多く集まる魔術都市に行くしかないと言った。……彼女は、それに従うことにした。 錬金術師は大抵が、人造宝石の販売を生業としている。ほとんどのそれは庶民が着飾るためのものであったが、彼女の合成する宝石は、一見して天然のそれと見分けがつかない宝飾品として中流階級以上にも人気があった。科学者の研究用に造ったものは、純度と結晶性が非常に高いとして高値がついた。彼女はまず高値で売れる研究用宝石の在庫を全て売り払った。宝飾品としての宝石は錬金術師の少ない魔術都市のほうが高値で売れると考え、魔術都市での資金源にすることにした。 ……そして彼女は、魔術都市に向かった。
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