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「『彼』が、……視えるのか……?」
「いや、『視え』てるワケじゃないよ。『居る』のを『感じ』られるのと、あとは『聞こえる』んだ。声っていうより、感情がね。……そのヒト、アンタのコトをとっても心配してるよ?」
その瞳はケルスの霊を憐れんでいるのか、或いはアゾットを憐れんでいるのか。
「名乗ってなかったね、アタシはネクロ。……そう呼ばれてる。こういう仕事だからね、普通は本名を明かさないんだよ。まあ、そもそもが大体の魔術師は真名を明かさないのが普通だけどね。アタシら後ろ暗い連中は、真名と通称と、さらに偽名を持ってるってワケさ。……それで、アンタの願いは何かな?……そして、その対価に何を支払える?」
「私の名はアゾットだ。……『彼』を蘇らせたい。その為に、力を貸して欲しい。金でよければ言い値で払う。それ以外でも、……たとえ私自身の命を支払っても構わない」
アゾットの言葉に、ネクロは盛大に溜息を吐いた。
「そりゃ『彼』も心配するワケだわ。アンタ、自分が何言ってるか分かってる?……控えめに言って、狂ってるよ、アンタ」
「……分かっている」
「いーやわかってないね!まあ、外でする話でもないだろうから、とりあえずウチに来な。お説教はそれからだ」
ネクロはそう言うと踵を返し、アゾットの返事も待たず彼女に背を向けて歩き出した。
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