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少し距離があったけど、この辺りでさも当たり前のように着物を着装している人なんて、きっとお隣りさん位のものだから、ほぼ間違いないはずだ。
ベンチに腰掛けた彼は、どこか浮世離れしているように感じた。
改めてまじまじと見た彼の顔は、一瞬呼吸をするのを忘れてしまう程、中性的な美しい顔立ちだった。
だけど、その表情は何故だか儚い印象を受ける。
視線はよく伸びた背筋に反して虚ろで、それでいてどこか寂しげだった。
着物の上に着た羽織の袖に、両手を交差するように通しており、それがとても様になっていたから、私は彼が何歳の時から着物を普段着使いしているのかと、素朴な疑問を抱いた。
そこで彼から、視線をそっと外す。
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