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今自分が何をしていたのかと、冷静になって考えてみると、何だか恥ずかしくなってきた。
ストーカーってこんな感じなんだろうか?なんて考え始める始末だ。
(……帰ろう。)
と。
木の陰から一歩踏み出した途端、「こんにちは」と聞き覚えのある声がした。
カラン、カランと彼の足元から下駄特有の音がする。
昨夜、大きな台風が過ぎ去ったことで秋晴れの今日。
カラリと乾いた空気に、少し肌寒さを覚える風に乗り、彼から香る花の匂い。
にこりと人当たりの良さが前面に出た、人畜無害そうな笑顔は何故だかしゃくに障った。
理由は自分でも分からなかった。
コソコソと彼を盗み見ていた罪悪感から、「どうも」と声を出すも、自分からは到底話を振れそうにはない。
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