多田

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 仔猫と出会って二週間ほど経った頃、あげた覚えのない餌が仔猫の段ボールの中に入っていた。俺には買うことの出来ない高級品の缶詰だ。  誰かが仔猫の存在に気付いてしまった……。恋人を寝とられたような、怒りと寂しさで無意識に唇を噛み締めてしまう。鉄の味が口内に広がり我に返ると、仔猫が心配そうに俺を見上げていた。 「俺がやる餌よりも美味かったか?」  俺がやれる餌は、食パンと牛乳だけだ。空っぽの缶詰を見つめながら仔猫の頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めて甘えてくる。  ひとしきり遊び、仔猫を段ボールに戻して帰ろうとすると、缶詰の下に紙があることに気付いた。 『仔猫ちゃんのお母さん(お父さん)へ いつも同じモノ食べてたら飽きちゃうし、体に悪いよ。これからは夕飯はボクがあげるね。お母さん(お父さん)は、朝飯と遊び相手を頼むね。 仔猫ちゃんと同じ捨て猫より』  缶詰を置いていった相手からの手紙だった。 「仔猫ちゃんと同じ捨て猫、か」  癖のない綺麗な文字に口許が弛む。姿の見えない捨て猫に妙な親近感を覚えた。

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