0人が本棚に入れています
本棚に追加
その男は不老不死を得た。
以降、彼のことは「男」と呼ぶことにする。
このストーリーには彼以外、特に注目に値するような特別な人物は出てこないので、この呼び方にする。
この小説では、あまり細かい事象に一つ一つ焦点を当ててはいかないことにする。
それはあまりにも冗長になってしまうと思われるからだ。
この不思議な男に起こったことを、あらすじの形で述べていこうと思う。
西暦2017年時点、男は20歳であった。
都内の大学2年生で、特筆するようなところはないただの男である。
両親は同い年で50歳、兄は25歳でごくありふれた会社員である。
が、父親が古文書のマニアであり、書斎が図書館のようになっていた。
ある日、男は書斎で「死神と取引する方法」という本を読んだ。
そしてそれを試みたところ、死神が目の前に現れ、自分を不老不死にしてくれたのである。
特に強い動機などがあったわけではない。単なる好奇心であった。
もちろん男ははじめ、本当に死神を呼び出せるなどとは思っていなかった。
さらに死神を呼び出したところで、まさか自分を不老不死にしてくれるなどとは思っていなかった。
通常、我々が持っている死神のイメージといえば、人々に不幸をもたらすものであり、人間が死神に遭遇すれば死ぬという先入観がある。
仮に取引などということができたとしても、それが人間にとって魅力的なものに見えたとしても、きっと最終的には我々は不幸になるに違いない…つまりハイリスクな取引である、と思われている。
ただそれらは、作り話でそのようなイメージが死神にあるのであり、本当のところどうであるかは誰も知らない。
男も死神がどのようなものであるかは知らなかった。
それで実際に取引……取引といってもこちらが何かを差し出したということもないのだが……をしてみたところ、男はどうやら不老不死になっていたようである。
ようである、という言い方をするのは、実際に不老不死になったという客観的な証拠を差し出すのは難しいからだ。
まさか自殺を試してみるわけにもいかない。もし本当に死んだら大変なことである。
それでもいくらか自分の体について試してみたところ、以下のようなことが分かった。
最初のコメントを投稿しよう!