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「チッ、なんだよ朝から、鬱陶しい。
てか寒い。閉めろ」
「え、何? 舌打ちした? 酷くない?寂しそうにしてるから声かけてあげたのに」
D組の臼田恵が開いた窓から祐吾の肩に手を乗せている。
「別に寂しくねーし。眠たいだけ」
恵の後方を体操着の生徒が続々と歩いて行く。
身を寄せ合いながら両手を擦り合わせ、口々に「寒いー」を連呼している。
「嘘ー、また愛ちゃんに見惚れてたんでしょ?
クラスメイトは騙せても幼馴染の目は誤魔化せないよ」
完全に図星。普段は男勝りで粗忽な奴なのにこういう事に関してはヤケに鋭い。
「あんだけ騒いでたら誰だってちょっとは見るだろ」
ニヤっとした恵の目線に釣られるように教室の前方に視線を移すと、愛野先生が皆に「終ーわーり!」と可愛く終了を宣言している。
「ていうか次体育だろ? 着替えなくていいの?」
「お? よくぞ聞いてくれました。
今日は体操服を忘れたので貸してください」
と言いながら許可も得ずに祐吾のカバンを漁り出す。
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