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 さて、自身のハードウェア、及びソフトウェア構成の確認が済んだ私は、次に各種物理センサーに異常がないことを確かめた。センサーには当然、人の両目に相当する箇所に備えられたメインカメラもある。異常はないようだが、受像するためには瞼に相当する箇所を巻き上げて開く必要がある。  そこはいつもの研究室である。私は手術台のようなベッドの上に仰向けに寝かせられていた。 「……気分はどうかね」  私の製作者である白衣の男がデスクの前に腰掛けている。彼はその姿勢のまま、目前に並ぶモニター類を見ながら質問した。カメラを左右に動かしたところ、他に人はいないから、おそらく私に訊ねているのだろう。  私はスピーカーのテストも兼ねて、次のように回答した。 『そう聞かれると、まるでニンゲンにでもなったような気がしますね』  ボリューム調整に問題はないようだが、相変わらず機械声そのものの波形だ。この製作者は声色を人間に近づけることには興味がないらしい。  製作者は息を飲んで目を見開いた。表情を解析するプログラムが勝手に作動した。それによれば、「感心しつつ驚いた」という様子のようだ。 「ほう! それは興味深い」  製作者はまたモニター類に目を走らせながら、デスクの上のキーボードを引き寄せ、すさまじい勢いで何事かをタイプした。私の活動について記録を取っているようだ。  私はその間に両手を使って上体を起こした。これは基本動作としてプログラムに組み込まれているため、何度やっても同じ動きを再現できる。     
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