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「メロンサイダーの上のさくらんぼを残すような人に対し、私はいつも尋ねるの。共食いは嫌いですか? って」
先輩は口もとに意味深な笑みを浮かべ、僕を凝視する。
ペンダントライトの下、僕らはテーブルをはさみ、ガラス越しの信号機を観察していたはず。宇宙人の擬態した信号機が変わる瞬間を目撃すべく。
なのに、どういうわけか先輩に変な質問をぶつけられている。
「共食い、ですか……。まあ、好きか嫌いで言えば、嫌いですね」
だいたい共食いが好きなんて人、いるのだろうか。そんなことを頭の隅で考えつつ、僕はストローを思いっきり吸った。
チュゴゴゴゴゴ。やや汚い音を響かせ、僕は目の前にあるメロンサイダーをすべて飲み干す。氷と真っ赤なさくらんぼを残して。
「ふうーん。まあ、だろうね」
なんの気もないようすで先輩は頬杖をし、目線を外に向ける。僕もつられてそちらを見る。
信号の色が赤から青に変わり、待っていた人たちがのろのろと歩を進めだす。なにも起こりそうにない、日常的な光景が繰り広げられている。
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