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第6話
校長の麻薬所持が発覚したのは、放課後の事だった。
校長室で麻薬を使用していたところを、他の教師に見つかり、通報されたらしい。私は現場を知らないが、どうやら校長は自分を咎めてきた教師を殴ったという。その後、やってきた警察に対しても散々抵抗してはいつもの粛々とした態度からは考えられないぐらいに激昂した様子で、聞くに耐えない罵倒を口にしていたとか。
まだ部活動中の時間だった事もあり、彼の行いは一部の生徒達の目にもつく事となった。
翌日、学校へ登校すると、緊急で朝礼会が行われた後、私達生徒は帰宅を命じられた。しばらくは休校になるとの事で、詳しくは追って学校側から各家庭に連絡が入るという。
ざわめく教室内の視線をかいくぐって学校を後にすると、私はいつも通りに喫茶店へ向かった。
歩き慣れた道だったが、昼よりも早くにこの道を歩くのは、今日が初めてだ。なんとなく不思議な違和感を覚えながらも歩みを進めれば、見慣れた喫茶店が現れる。いつぞやに、「おかしな」と私が口にしたその名前を携えて。
けれど、そこはもう、いつも通りのお店ではなくなっていた。
黒字で『KEEP OUT』と書かれた黄色いテープ。店の前を囲うようにして張られた、と青いビニールの壁。それから、入り口を見張るようにして立つ、数人の警察達。
いわゆる『事件現場』と化した喫茶店が、そこにはあった。
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