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早見先生が麻薬の売買人兼詐欺師だというニュースが報道されたのは、校長の事件が発覚して少ししての事だった。
麻薬検査の結果、麻薬の使用を言い逃れ出来なくなった校長が漏らした情報らしい。
他にも数人の売買人がおり、この喫茶店が彼らの隠れ家だと校長は語ったという。それを知った警察は急いでこの店に向かった。だが、その時にはもう、店はもぬけの殻となっていたそうだ。
それでも、何かしらの痕跡はないかと一縷の望みをかけて、今も尚、警察達は店を漁っている。
事件現場を見に来た野次馬だと思われぬよう、少し離れたところで足を止めた。物陰に隠れて事件現場を眺めながら、私は考える。
――はたして、早見一郎は知っていたのだろうか、と。
否、知っていた筈だ。
あの校長こそが、私の厳格で立場のある父であった事を。
最初はきっと、たまたまだったのだろうと思う。私があの店に来たこと。それはただの偶然でしかない。
だけど、その偶然が、彼にとっては嬉しい幸運だったのだろう。きっと、何かに使えると思った。だから、私にわざと近づいてきた。
結果として、彼の企みは成功したのだろうと思う。
私の推測が正しければ、彼は私を使って校長にメッセージを送っていたはずだ。
なぜなら、彼らが使っていた麻薬は『LSD』だったから。
非合法幻覚剤『LSD』
正式名称は『リゼルグ酸ジエチルアミド』
隠語――、『珈琲』
知ったのは昨晩、事情聴取に警察が家まで来た後のこと。
不穏な空気に不安がる下の子達をあやしながら、父が使っていた麻薬について携帯で調べた時に、その情報は出てきた。
いつぞや、「隠語みたいだろう」と言って笑っていた彼の事が思い出された。あの時は、なにを馬鹿な事をと思ったが、今はわかる。あれは本当に隠語だったのだ。私宛ではなく、父宛だったというだけで、彼は本当の事を述べていたのだ。
そうやって彼は、私が知らないところで、じわじわと父を壊してしていった。
私と一緒に休憩していた、その傍らで。
「何が、聖人君子な職業よ」
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