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「ここの奥さん、よくお喋りをする方のようだね」
「あ、うちの母です」
私は苦笑いをした。
「いつも陽気でお喋り好きで、ついついお客さんを引き留めちゃうんですよね」
「うん、妻から聞いていたよ。とっても明るくて気さくな方だと」
「まあ……母の人柄だけで持っているようなお店なんで」
母がいないと客足も少ないのは事実で、常連さんは来るたびに母がいつ来るかを聞いて来る。だけど、忙しいと私も店番が大変だから、母が帰って来るまではのんびりペースで丁度良かった。
「妻はここの奥さんに花の育て方も教わって、ガーデニングの趣味も出来た。3年前に病気になって呆気なく逝ってしまったけどね。病院には奥さんも何度か見舞いに来てくれて、見舞いの花も仏花も常にここで買わせてもらっているんだよ。妻が好きだったから」
「ありがとうございます」
私は笑顔でそう言うと、ビニール袋の口を縛って、用意したアリッサムを渡そうとした。
「優未も母親に倣って花が好きな子になった」
「そうですね。そこにしゃがんで、物凄く丁寧に選んでいましたよ」
さっきの優未の真剣な表情を思い出して微笑んだ。
「うん、何をするのも一生懸命な子でね。あの日も、家に帰ってランドセルを置いたら母親の仏花を買って来て欲しいと頼んでいたんだ」
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