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通り雨の後、外が明るくなって、雲の隙間から微かに虹の橋の足元が見えた。
そんな空をぼんやり眺めていた時、ふいにその子が現れた。
黄色い帽子と桜色のランドセルを背負ったまま、しゃがみ込んで店先に並んでいる花のポットを1つ1つ覗くように見入っていた。
「こんにちは。お庭に植える花を選んでいるの?」
あまりにも真剣な少女の表情が可愛らしくて、私は隣にしゃがみ込んで話しかけた。
驚いたようにこちらを見ると、「ううん、お庭じゃなくてママのお墓」とその子が答えた。
私はチラりと切り花の仏花コーナーに目をやったけれど、それを奨めることに意味が無いのだろうと感じた。
「お墓に植えるの?」
「……本当はね、お墓の周りをお花いっぱい植えたかったの。だけど、パパがダメだって。お寺の人に怒られるからって。だから植木鉢のお花を置くの」
育てやすい花を奨めてあげようか? とも思ったけれど、やはりそれも意味が無いことのように思えた。少女の目に留まる、何か特別な花を探しているように見えたから。
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