1・亡き母の好きな花

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 私の家はお花屋さんだ。  と言っても父は普通の会社員で、母が家の1階で生花店を営んでいる。  小さい頃からこのお店が大好きで、よく入り浸っては母に花の育て方や、花束やアレンジメントの作り方を教わって来た。  祖母がここのところ体調が優れず、入退院を繰り返しているため、母がその付き添いへ行っている間、私が高校から帰ってお店番をすることが増えていた。  切り花の入っているケースの水を取り替えたり、大きな観葉植物を運んだりと肉体労働もあるのだけど、店内を可愛く飾り付けたり、好きな花で寄せ植えやミニ花束を作って自由にディスプレイしたり、自分なりにお店を作れるからとっても楽しかった。  そして、この私の作り上げたお気に入りの空間に、今、1人の可愛らしいお客さんが来ているのだ。  黄色い帽子は一年生だろう。胸に大きめの名札が付いている。 「1ねん2くみ。はとりゆみちゃん?」  私は思わずその名札を読み上げた。 「うん。『優未(ゆみ)』ってね、『優しい未来を』って意味なんだって」  優未は自分の名前が気に入っているのか、花のポットの前でしゃがんだまま、とても嬉しそうに私を見上げた。 「ママが付けてくれたんだって!」  そうか、だから嬉しいのかもしれない。そう思うと、少し切なく感じた。
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