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優未がゆっくりと花を選んでいる間、私は仏花を持って横断歩道の向こうに渡った。
先週、お店の前の横断歩道近くで、バイクの接触事故があって人が亡くなっていたのだ。それから、毎日そこに小さな仏花を置いている。
他にもいくつか花束が置いてあったから、その横に置くとしゃがんで両手を合わせた。
「お姉さん、今のお花は何のお花?」
見ていたようで、店先に戻った私に優未が聞いた。
「あそこの事故の所に置いたんでしょう?」
「うん、そこにあるのと同じだよ。菊とトルコ桔梗とりんどうと……」
「ふうん。綺麗ね」
そう言いながらも、心ではピンと来ていないのが分かった。
「亡くなった人には、あの花がいいの?」
「あれは仏花と言って、普通はお墓や仏壇の両脇に一つずつ飾るお花なの。花持ちがいいのと、菊なんかは邪気を取るとか意味があるけど……まあ、一般的には使われることは多いよ」
そう言いながら優未の顔を見ると、やはりあまり納得していないような表情だったから、私は優未の隣にしゃがんだ。
「でもね、お母さんが好きだった花とか、優未ちゃんがあげたい花が一番だと思うよ。心のこもったお花が一番喜ばれるんだから」
そう言うと、優未の顔がパッと明るくなって嬉しそうに頷いた。
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