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ダッチワイフ編1
大粒の涙をぼたぼたとこぼしながら震えていたが、助けを呼ばなければいけないとようやく気づいた庵田宙は立ちあがる。頼りない足取りで歩きだすが、涙の幕で視界が霞んでいるせいか数歩も進まないうちに転んでしまう。
「うっ、痛……」
肝心な時に役に立たない自身を恨んだ。だから日頃から、情けないとか鈍くさいとか言われてしまう。
また新しい涙が溢れてしまいそうだったが、ぐっと堪えて地面に手を突き起きあがろうとする。そんな宙の瞳に、一筋の眩い光が見えた。
「あ、流れ星!」
明るかった空はいつの間にか暗闇に変わり、いくつもの星が煌めいている。そのひとつが、地に向かって吸い込まれていくように落ちていった。
沈んでいた気持ちは消え、希望が生まれる。幼い子供の足では、人を呼んで来るにも時間がかかるだろう。
だけど、神様に頼めばなんとかしてくれるに違いない。
流れ星が消えるまでに三度願いを唱えると、絶対に叶うと純粋に宙は信じていた。
「瑛理を助けてください! 助けて、助けてッ!!」
大声で叫んだ直後に期待に胸を膨らませながら、勢いよく振り返る。そこには、友人の宇野瑛理がうつぶせで倒れていた。
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