目眩めく思い・可憐だ

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 有利不利?  優劣?  敗北感?  そもそもなんで張り合う必要があるのか。  大声を張り上げて助けを求めてしまえば良いではないか。  しかしもう手遅れな気がした。タイミングを見失ったのだ。そういうことに気付くのはたいてい事が起こってからかなり経ってからだ。そうやっていつも後悔する羽目になる。この種の意味不明なものと対峙することが僕に利益を生み出すわけが無い。明らかにエネルギーの浪費だ。だが、いつでもやらかしてしまうというのは、僕にとってエネルギーが浪費するためにあるからかもしれない。そもそもが曖昧なのだ。節約も浪費も、パフォーマンスに差こそあれ、どちらも同じ消費ではないか。生産され、変換された時点で、すでに大量のエネルギーを使っている。食べるために使うカロリーのようなものだろうか。僕の中における根本的な環境問題だ。 思考が脱線する。それに気付いて彼に意識を向けると、まだ先程と変わらぬ顔を保っていた。危害を加える気はなさそうだ。 「浪費と消費の差はどこにあるのかって?」  まただ。やはり彼の方から仕掛けてきた。 「そうさな、字の形も似ているし、さほどの差はなさそうだ。いや、これは冗談だよ。消費する主体、あるいはその観察者がエネルギーの使途を無駄と思うか、有益だと思うかの違いじゃないか?たいていの言葉なんて、認識の差異でしかないわけだ、と僕らは思っている。」  彼が続ける。そして沈黙。僕ら? 「そう。君もそう思ったはずだ。僕らは意識を共有している。ただし、君には僕についてわからないところがたくさんあるよな。僕は君の必要条件、君は僕の十分条件ってワケだ。ただし、それは意識面での問題。存在としてはその逆だ。つまり、君が死ぬと僕も死ぬのに対して、僕が死んでも、君は死なない。連鎖、そしてその繰り返しだ。」  沈黙。なんとなくだが、だんだん掴めてきた。とりあえず、彼は僕の心が読めるのだ。ということは、僕は声を出す必要はない。言葉にしても僕が惨めになるだけだし、僕の方だけが一方的に、概念が曖昧になる。 「そういうこと。」
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