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エレクト
私は三ツ星(食べログ)レストランの厨房で働いていたことがあります。これは1ヶ月という長きに渡る下積みを経て、ようやく包丁を握らせてもらえるようになった時の話です。
「S君、野菜スティック作ってみて」
「は、はい!」
「長さは12センチに統一してね」先輩はそう言い残すと、どこかへ消えてしまうのでした。
野菜スティックといえば、お店の大事なメニューです。切っただけの野菜を冷やしたコップに挿して800円も稼げるのだから、責任重大です。人参と大根の皮をピーラーで剥きながら、私はふと気づきました。
12センチと言われたが定規はどこにあるのだろう? 見渡す限り、それらしいものはありません。足がガタガタ震えてくるのが分かりました。
完全にやられた・・・・・・先輩は定規をアナルかどこかに隠して、私をおとしいれようとしているのかもしれません。野菜スティックに失敗してシェフに怒られている姿を笑いものにするのが目的なのでしょう。あわよくば撮影してツイッターにアップする気なのです。
そうはさせない。私は闘争心を燃やし始めていました。
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