あんたを守りたい

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――この時から既に僕は、リタが砂龍族の王女だということに気づいていた。 あの日、奴隷部屋で身分を明かしていた彼女は、多分気づいていないだろうけれど。 「僕は水龍族のヨゼフ。 さっきはごめん。 君を起こして、一緒にこの城から抜け出そうと思ってさ」 僕は愛想笑いを浮かべ、その場を上手に取り繕おうと試みた。 僕が言ったことの意味がよくわからなかったのか、リタは一瞬首を傾げる。 だが、すぐに意味を悟ったのか、辺りをきょろきょろと見回し始めた。 彼女は鉄の棒を手に取ると、それをほんの僅かな隙間に差し込んだ。 「何をぼんやりしてるの? 早く、手伝ってよ!」 「手伝ってって、何を?」 「君もこの城を出たいんでしょう? だったら、この棒を私と一緒に、右に押して」 リタの指示に従い、彼女と一緒に鉄の棒を押す。 すると、檻の隙間がだんだんと広がっていき、僕達二人が通れるくらいになった。 僕は、アイディアをくれたリタに礼を言う。 「ありがとう。 えっと、君の名前は……」 「リタ。 私は砂龍族よ。 さあ、挨拶はこれくらいにして、さっさとここを出るわよ」 そう言うと小さいリタは、小さい僕の手を引き、一目散に走る。 ドレスの桃色の裾が破けそうになるのも、お構いなしで。 魔道師達の追っ手を振り切り、僕達は城の裏口に辿り着く。 ここを抜ければ、それぞれの故郷に帰れる。 そして、生き別れた一族の人達に、また会える。 仲間達との再会を果たせるという希望を胸に、僕はリタと一緒にこの城からの脱出を試みる。 だが、それは高望みだったようだ。 檻を出てから二十分も経たないうちに、僕達は赤いローブを纏った魔道師達に囲まれてしまった。 全員、華の属性を持つ魔道師だ。 彼らは小さい僕達を見ると、低い声で笑った。 「見つけたぞ、水龍族の小僧。 大人しくその女の子と一緒に、檻に戻れ」
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