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01.メガネくんの告白
「僕の童貞、貰ってくれませんか? 」
「はぁ? 」
深夜0時。あたしはコンビニのメガネくんに告白された。
*
春元若葉、24歳。
都内のデザイン事務所に勤務して2年。ほぼ毎日終電帰りの日々を淡々と過ごしている。
仕事は楽しい。本格的なデザインはまだ任されないけれど、チーフデザイナーの先輩からちょっとした紙面のデザインをさせて貰ったり、新しいソフトが使いこなせるようになったり。日々はとても充実している。
--男以外は。
あたしは、人より少しだけ性欲が強い、と思う。子供の頃からそういう行為にとても興味があったし、高校1年で初体験した後は、1年と間を空けずに常に『させてくれる』男の人がそばに居た。それは、真面目なお付き合いというより、性欲を満たすお付き合いだったと思う。今思えば。
付き合っている、と自分では思っていた男たちは、いつもこうやって言って別れを切り出すのだ。
『若葉とのセックスはしんどい』と。
つい先日も、1年付き合っていた人に、またもや同じような台詞を吐かれて別れを切り出されてしまったばかりだ。さすがにこれほどおなじ理由が続くと、あたしだって落ち込んでしまう。
あたしのセックスの、何が悪いのか。
誰かと比較するような事でもないから、改善策が見つからなくて、あたしは次の恋愛に臆病になりかけていた。
人気のない最寄り駅のホームに降り立ち、あたしははぁーっと大きくため息を吐き出す。疲れた帰り道は特に、悶々とした気持ちが大きくなる。
あたしは今、絶賛欲求不満中なのだった。
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