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あいつは僕にとって唯一の存在だった。暗闇に閉じこもる事しかできない僕を光の方へ引っ張りだしたのは他でもないあいつ。
あいつと過ごす日々に芽生えたものは花を咲かせる事を許されない禁断の蕾。淡く染まった蕾を隠して僕は過ごした。誰にも知られる事の無く枯れていく筈だったその蕾は日に日に大きくなった。
咲かせてはいけないと知りつつ、蕾に水をやる事はやめられなかった。
僕にとっての素晴らしい日々は長続きはしなかった。
この世界はいくつもの心で出来ている。誰かが望む世界は誰かの望まない世界だ。
僕の望んだ世界は誰かの望まない世界だったらしい。あいつの望んだ世界はどこにも無かった。
ただそれだけなのかも知れない。けれど、あいつの見せた微笑みは明日を望んでいた。...そう思う。
自分勝手な僕はそう思う事しか出来ない。
もうあいつの望む世界は、僕の望む世界は無いのだと空を見上げるたびに思う。
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