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こいつ、あまり関わらない方が良い気がする。
そんな風に僕は警戒を強めながら、それでも表面上は取り繕うように微笑み、
「初めまして、フランツ様。僕が、“虚無と静寂の魔法使い”です」
「ああ、君がオルヴァが囲って溺愛していると評判の、美貌の魔法使いか」
さらっとフランツが言った言葉に僕はすぐさま訂正を入れた。
「別に僕は囲われているわけではありません。契約しているだけです」
「ふむ、そうなのか?」
オルヴァにフランツが問いかけると、オルヴァは肩をすくめて、
「私のお姫様はなかなか私に心を許してくれないようだ」
「そういったかたくなな壁を取り除いていくのも楽しいのでは? だが……美貌の少年の足に鎖をつけるのは、なかなかいい趣味だ」
「そうだろう、あの白い肌に似合うだろう?」
「確かに。それに禁欲的な服が艶めかしい。それもまたいい」
「珍しく意見が一致するな。実は趣味が同じだったか。だが、ルイスは渡さないぞ?」
「いや、見る分にはいいが私好みではないな。……もっと元気が良くて抵抗するくらいの者が……丁度いい。名前も知らぬ貴族の騎士に一人いたのだが、私を見ると逃げ出すので未だに名前を知らずにいるのだがね」
そう言った話を聞きながら僕は、分かった、こいつ、オルヴァと同じ変態だと心の中で断定した。
こんな風に好みの相手を鎖でつないで、それを喜んでいるのだ。
変態だ、関わり合いたくないと僕は思いながら、
「そ、それで、フランツ様は僕が恐ろしくないのですか?」
「敵ではないからな。そもそも、そんな“虚無と静寂の魔法使い”など、化石の様な言い伝えを真に受けるほど……」
「“嘘”ですね」
僕は微笑みながら告げると、フランツの笑みが固まる。
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