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それに僕は小さく笑いながら、
「貴方は僕を恐れ、警戒している。だからどんな存在か自分から会って、確かめようとも思っている。敵に回してはいけない存在なのかを見定めに、ね」
「……なるほど、先読みの力か」
「貴方はエリアスが次の王となる為に、幼い王子が消されるのではないかと心配している。でも大丈夫。エリアスは王になるつもりなんて毛頭ない」
「さて、人の心は変わりやすい」
「貴方が初めは保護して、ごたごたの影響で孤児院に隠れてしまったメルト王子……今、必死に探しているみたいだね」
「それは、何処にいるのか知っていると?」
「君達には見つけられないかもしれないね」
フランツの瞳に冷たい光が宿っている。
それに僕はまっすぐに見返して、
「貴方はあの子の味方? どんな事があっても?」
「どんな事があっても」
「……そういった面では、貴方は誠実な人みたいだね。子供が恋愛対象というわけではなさそうだし」
僕の言葉に渋面を作ったフランツ。
せっかくなので心や思考なども魔法で読んだのだけれど、それがフランツには気色が悪かったのだろう。
僕はそんなフランツに、鎖を見て喜ぶような変態に一矢報いた気持ちになりながら、
「あの子は今、僕の保護下にあるよ。だから安心するといい」
「……何だと?」
「たまたま僕のいる孤児院にあの子が現れて、孤児院の子達とも仲良くやっているよ。今は内職の手伝いをしてもらっているけれどね」
「……お前は、何者だ?」
そういえば彼は、僕は元はどんな出自の人間高を知らないようだ。
そもそもその情報すらも、オルヴァが隠してしまっているはず。
だから僕は彼に微笑し、
「僕が誰なのかは、オルヴァと彼の部下しか知らないのに、教えるわけないでしょう? でもできるだけ溶け込ますように隠しているから、安心するといい」
僕はそう答えると、フランツが舌打ちしたくなったように呻く。
よりにもよってオルヴァ側に握られるとは思わなかったのだろう。
これから本格的に捜査を開始……すでにしているだろうけれど、と僕は笑って、
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