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「ごめん、今は手が離せないから勝手に入ってきてー、鍵は開いているから」
「不用心だな。俺じゃなかったらどうするんだ」
困ったようにエリアスがドアを開けて現れたエリアスに僕は、
「でもエリアスが守ってくれるんでしょう?」
「それは……そうだが。でも鍵をかけないのは……」
「料理中だったから、外に水を汲みに行く必要があったからだよ。でもこの分だと足りそうだね」
「そうなのか……あれ?」
そこでエリアスはメルトに気付いたようだった。
驚いた顔をしていたのは、多分自分に似ていたからだろう。
メルトもエリアスを見て驚いているようだし。と、
「この子は、新しく孤児院に入った子か?」
それを聞いた僕の中で、悪戯心が湧く。
ちょっとからかってやろうと思って、
「違うよ、僕とエリアスの子だよ。ほらメルト、パパって呼んであげなよ」
そんな僕の言葉にメルトは目を瞬かせて僕を見て、面白そうに笑い、
「パパ」
と呼んだ。
エリアスが固まった。
そしてすぐ様くるりと踵を返して、孤児院から出て行ってしまう。
ちょっとやりすぎたかなと僕が思っていると、しばらくしてエリアスが戻ってきて、
「そういった冗談はやめてくれ。俺に似すぎていて、何か間違いがあったのかと思えてしまう」
「はは、びっくりした? そういえば丁度ご飯が出来たから、一緒に食べよう」
そう言って僕はエリアスを誘う。
途中メルスが、エリアスが騎士団の人だというと緊張していたが、下級の騎士で雑用係だからそんなに偉くないんだと話すと安心したようだった。そこで、
「今日はここに来る前騎士団で酷い目にあって、大変だったんだ」
「そうなんだ、だからこちらの方がましだって言ったんだね」
「え?」
そこでエリアスが聞いてきて僕ははっとして、
「そ、それでどんな?」
「……身代わりの恋人にさせられかけて、俺を巻き込むなとやり返してきた」
「そうなんだ……エリアスも大変だったね。あ、パンのおかわりいる?」
そう聞くと、エリアスはいるというのでおかわりを持ってくる僕。
でも、恋人の身代わりって誰だろうと思って、後で占っておこうかなと思う。
こんな風に、僕の一日はこの時までは平穏だった。
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