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今日は朝から仕事が忙しいので、朝からあいつの顔を見なくて済む。
そう思うと、何故か心の何処かで引っかかりを俺は覚える。
何故だろう、あいつに、あの美貌の不気味な魔法使いに会わなくて済むのに。
「俺が会いたいと思っているのか? 冗談じゃない、あいつは信用ならない」
人の運命を動かして、それが僕に皆が望んでいる役割だと言って。
俺自身も彼の力を借りたのだ。
そう、頼ったのだ。
だから、それを否定なんて出来ないはずなのだ。
なのにそう言って笑うあの魔法使いの顔が頭から離れない。
あれは彼の本心からだったのだろうか。
もし違うならそれは……それは?
「違う、俺は無理やりあいつに囚われているだけだ。俺は、あいつが……嫌いだ」
そう言いながらも、あの魔法使いは俺や孤児院のルイスを守る為に動いてくれている。
きっと俺に気に入られるためだ。
顔が気に入っていると言っていた、それが理由。
でも本当にそれだけか?
あの魔法使いは意外に狡猾だ。
それは彼の言動から分かるだろう。
ならば彼が気に入られたい俺に、何か秘密があるのだろうか。
そういえばこの前オルヴァが……。
オルヴァはあの魔法使いが俺を気に入る理由を知っているのかもしれない。
その内聞きだしてみようと俺は決めて、そこで仕事を始めたのだった。
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それはもうすぐ帰る時間だと思ったそんな頃だ。
たまたま忙しくて最後に残っていたのは俺とゲルトだった。
見回りの途中に何度も酷い目にあったが、それらは以前あの魔法使いにもらったもので、全て対処できた。
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