閑話-オルヴァ視点

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 フランツと連絡をとった私はは、深々と溜息をつく。 「できるかぎり彼にはルイスと合わせたくなかったが、仕方がない」  彼の家は、特に王の家系と密接に関わっている。  だからこそ、“虚無と静寂の魔法使い”であるルイスを警戒しているのだろうことも分かっていた。  その力が関わって、自分たちに何か危害を加えるのでは、反逆するのではとフランツが思うのは当然だ。  そして今回の出会いと会話で、危険だと彼が判断したならばどうなるか。 「それが不安だが……ルイス自身も大人しとはいえない存在だからな」  だがそれぐらいでなければ、そう私は思う。  牙を持たなければ“餌”になるだけだ。  それにルイスの力は本物だから、フランツは手出しできないだろう、そう考えたのも今回接触させてもいいという理由だった。  すでに巻き込まれているのだから仕方がない部分もあるが。  そう思いながらも、この美しい魔法使いを本当は自分だけで囲ってしまいたいと思っているのは、私の紛れも無い本心だった。  この美しさは人を魅了するたぐいのものだ。  心を捕らえて放さない危険な美貌。  つい彼の黒髪をひとすくいしてキスしてしまう。  欲望からついしてしてしまった行動だけれど、ルイスは顔を赤くして焦っている。  そんな風に可愛い顔をして、誘うっているのかと思ってしまう。  けれど彼はすぐに、 「自覚はしているよ、見た目がいいのはね。でもこの“虚無と静寂の魔法使い”である僕に手を出そうとする輩がいるとは思えないよ? 占う人達だって皆……どこか恐れを抱いた瞳で僕を見ているのに?」    確かにこの力は恐ろしいかもしれないが、それでも、この美貌は男を欲情させる。  オルヴァはおかしな事を言うねと笑うルイスに私は、つい耐え切れずに押し倒してしまう。 「オルヴァ?」  不思議そうに名前を読むルイスの声は、どこかか細く震えている。
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