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さらっと言い切ったオルヴァに、ふと先日話した内容を思い出した俺は、
「この事を言っていたのか? 確か前に……」
「そうだ。だから事前に気があったから親友になったと言っただろう?」
冗談めかして言うオルヴァに俺は苦笑する。
だがそこで俺は気づいた。
「あの魔法使いもその事を知っているのか?」
「? それはルイスの事か? “静寂と虚無の魔法使い”の?」
「そうだ。……知っていたのか?」
「ああ。それで手伝ってもらっていたが……」
「あの魔法使いめ、全部知っていたのか」
俺は呟く。
無償の愛をくれていると思った俺が愚かだった。
全ては打算があって、俺が現王の隠し子だったから近づいてきて……。
惹かれ始めていると気付いた分、憎しみが生まれる。
だから俺に、王になりたいかとあの魔法使いは聞いてきたのだ。
もしもあの時頷いていたならどうなったのだろう。
いや、考える意味はない。
すでに過去に俺は選択して、けれどあいつはそれでも何か目的があって近づいてきたのだろう。
俺の知らない俺自身を知って、それが目当てで近づいてきたのだ。
だがそんな忌々しそうな俺にオルヴァは、
「そんなに邪険に扱うのは、ルイスが可哀想ではないのか?」
怒ったようなオルヴァ。
だからお前もあいつの被害者なのにと、好きだと分かっていてそれを気付かないふりして利用する、“悪女”の様な男だと俺は知っている。
自然と俺の口に笑みが浮かぶ。
親友であるオルヴァも被害者なのだ。
俺と同じく、あの魔法使いに惑わされている、そんな哀れな男なのだ。
だから俺はオルヴァに告げ口をした。
「あの魔法使いのルイスは、オルヴァ、お前があいつを好きなのを知っていて、今後、お前と相性のいい恋人を見つけてくっつける予定だそうだ」
俺がそう告げると、オルヴァは言葉を失ったように沈黙する。
そうだろうと俺が思っているとそこで、珍しくオルヴァが俺に皮肉げに笑い、
「エリアス、あの魔法使いの秘密を教えてやろう」
「秘密? どんな?」
「あのお前が嫌っている魔法使い、ルイスは、お前が大好きな孤児院のルイスと同一人物だ」
何を言っているのか、俺は一瞬分からなくなったのだった。
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