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そんな驚く『僕』を尻目に、『キミ』は恐ろしいことを言って退けた。
「もし結婚して子供が生まれたら、この子の名前をつける予定なんだ! でも普通に男でも女でも良い名前だし、おかしくないから大丈夫だろ?」
「……!?」
なん、だって……!?
「……って、もうすぐ終電なくなっちまう! じゃあまた来るわ! またな!」
そんなことを言って、『キミ』はそそくさと立ち去っていく。『僕』はその後ろ姿を、さっきとは違う想いで見つめていた。
『キミ』が名付けるといったその子は、『僕』の考える普通とは随分違った名前だったような気がする。
それがもしかしたら、『僕』になる可能性があるのか。
『僕』は小さく空を仰ぎながら、小さく小さく懇願した。
「……どうか、『キミ』のもとに生まれませんように」
それが『僕』の、最初で最後の心からの願いになった。
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