じゅんばん

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──ズルッ(中から出てきたメイド服)  気にしてくれ。大いに気にしてくれ。 「どーよ! 可愛いだろ!? お前が妹だったら是非とも着てもらって『お兄ちゃん♪』とか言ってもらいたい代物だ! しかも素材も良いんだぜこれ? 生地も柔らかくって評判良いし」  いや、これは素材とか生地とかそういう問題じゃない。  というか、『キミ』は相変わらずのアニメや特撮の趣味か。昔からそういうの好きだったよな。正義のヒーローとか、弱いものの味方とか。  でも、それがこんな形に転じるなんて予想もしていなかったけれど。 「……まぁ、幸せそうだしいいっか」  いまだに目の前でそのメイド服の良さについて語っている変態の兄。  端からみれば深夜のお寺でメイド服のよさを墓に向かって語るおっさんだ。絶対にかかわり合いたくない。それが『僕』の兄だ。  でも、それでも『僕』の血の繋がった、この世界にただ1人の兄だ。  いくら問題があるとはいえ、嫌いにはなれないし突き放すこともできない。だって、それが家族じゃないか。 「……でよ! それだけじゃないんだぜ! こっちもスペシャルな贈り物なんだからよ!」  と、まだ持ってきているらしい。今度こそまともなものだろう。兄にも困ったものだ。 ──ズルッ(セーラー服)  本当に……困ったものだ……! 「どうだ、なかなか良い色合いだろ? ここら辺のラインなんかいい感じだよな!」 「アウトだよ! 盛大にアウトだよ!」  『キミ』は27だろう!? セーラー服やメイド服を所持しているだけでも大問題なのに、それをこんな場所で広げるのもどうかしているよ! 「あ、安心しろ。これは妹のお下がりだ。もうあいつも着ないから安心してくれ」 「もっとアウトだよ! それどう考えても妹の許可をとってないよね!?」  ダメだこの兄……早くなんとかしないと……!  と、その変態兄貴は少し真面目な顔になって言う。 「……お前、妹の制服姿見られなかったからな。これで我慢してくれや」 「……え?」  もしかして、これは『僕』に着せるんじゃなくて、見せるために持ってきた?
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