再会は雨音と共に

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再会は雨音と共に

 蓄音機から流れるノイズ混じりの音楽。  サイフォンからコポコポとお湯の沸く音と、香ばしい珈琲の香りが心を撫でる。  まるで昭和の時代へタイムスリップしてしまったようなこの空間が私は好きだ。  休日は必ずこの店に来て、1週間の労をねぎらっている。 「お待たせしました」  淹れたての珈琲を運んでくれたのは、この古びた喫茶店の店主(マスター)。  若い頃はさぞかしモテたに違いないと思える端正な顔立ちに、少し白髪の混じった口髭が似合っている。 「ありがとうございます」  私は店主へ微笑むと、カップへ口付けた。 「こちらこそ。若い女性がこんな古くて寂れた喫茶店を贔屓(ひいき)にしてくれるなんて、嬉しいですよ」 「私、騒々しい場所は苦手なんです。それに置いてあるものは古いけど、どこもピカピカに磨いてありますよね」  私の座っている革張りのソファも相当な年代物だろうに、ひび割れる事無く艶を放ち、背もたれに施された真鍮(しんちゅう)の飾りも金色に輝いている。 「ありがとうございます。この店は私の宝物なんです。どうぞごゆっくり」  店主はそう言ってカウンターの奥へゆっくりと歩いていった。  客は私ひとり。     
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