prologue

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 インテリアとは無縁の白い箱のような部屋に一人。面白味も何もない白いベッドに横たわりながら窓の外を眺めるが、真っ黒い空は星をも受け付けずに闇を大盤振る舞いしている。  この東京に満天の星空など、あるはずがない。俺の人生だって、光り輝くような世界とは無縁だ。今眺めている闇と同じく誰も望まない世界に生きている。  だが生きている。  いつかこんな事になるとは思っていたが、同業の誰かにぶっ放される程度にしか考えていなかった。それがどうだ?ヤクザの世界もグローバル化しているということだ。  煙草が無性に吸いたいが、ここにはない。「五十川のじいさんにバレたら張り倒されます」行徳はそう言いながら隠していたタバコを全て持ち去った。  忌々しいじじいだ。俺がこんな目にあっているのは、五十川のおっさんが俺に泣きついてきたからだ。少しぐらい目をつぶってくれてもいいだろうに。  あの一本の電話で、俺達の周辺がにわかに騒ぎだした。闇から降り立ったのは、やっかいな男。その男が放り投げた毛糸玉は絡んで、もつれて俺達を縛り上げた。  あげく、このザマだ。  くそっ!煙草がほしいぜ。ついでにバーボンも。
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