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アラームが急に鳴った。
「うるさいな」
俺はボタンを押して黙らせる。それと同時に、時間を確認する。
八時十分。
俺は驚いて、起き上がる。急ピッチで制服に着替えて外に出る。
「姉さん! なんで起こしてくれなかったの?」
エプロン姿の姉が答える。
「起こしたわよ、三回も! それより、朝食は?」
「間に合わないから、いい!」
俺は弁当を取って外に出る。そして、カゴにカバンを入れ、自転車に飛び乗る。
完全に遅刻だ。間に合う可能性はない。二十分以上かかるのだから、当然なのかもしれない。
その急いでいる間に、自分のことを少し話そう。俺は西崎翔太。どこにでもいる普通の高校二年生だ。因みに、先程俺に声をかけたのは、姉の奈穂である。七歳年の離れた姉であり、さらに、上に二十六歳の兄がいるが、今は気にすることはないので、置いておこう。
そんな俺はあと少しで、学校に着きそうになっている。あと一つ曲がれば、もう目の前だ。時間は過ぎているが、今なら、朝礼に遅れる程度で済みそうだ。その角を曲がったときだった。
黒い何かがぶつかってきた。羽のような感覚が広がり、バランスを崩す。恐らく、カラスか何かなのだろう。
気づくと、俺は地面に投げ出されていた。全身が鋭く痛んだが、怪我はないようだ。起き上がって、当たったものを確認する。
俺は驚きのあまり声が出なくなる。鳥のようなものにぶつかったはずなのに、黒い浴衣を着た自分と同じくらいの歳の少女が立っていた。
「なんで…」
俺が訊く前に、少女が俺に訊く。
「私が見えるの?」
何を言っているのか、よく分からない。
「正面衝突したのだから、見えない訳ないだろう。というか、俺はカラスに当たったはずだが…」
続きを言う前に、少女が言う。
「あのカラスは私」
何を言っているんだろう。ますます意味が分からない。
「は?」
「だから、あのカラスは私! そして、私はあなたの式神。だから、今の私は誰にも見えないの!」
俺の疑問は収まらない。これが、式神三条との出会いだった。
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