5人が本棚に入れています
本棚に追加
「もしかして、大変なことというのは、記憶と霊力を奪われることだったかもしれないな」
鶴原は呟く。しかし、倉橋は答えなかった。彼女は泣いているようだ。
「琴音ちゃんは、主がいなくなったから、消えたのかな」
倉橋は言う。そう考えるのが、自然だろう。彼女は以前、式神は主なしで存在することはできないと、言っていた。それから、三条が俺の式神になるまでの四年間、二人は三条と会うことはなかった。大塚も二人の記憶というのは、ほとんどなく、数ヶ月後、教育実習の期間を終え、大学に戻っていった。
鶴原と倉橋は、式神という接点を失ってしまったため、別々になってしまった。鶴原は俺や新里と仲良くなり、倉橋も別の友達を作っているのだった。
それから、すぐ月日が経った。大塚の記憶を失ってしまったという過去は鶴原にとっては忘れたいものだった。永久に封印して、二度と開かないでいたい。そんな類いのものだった。しかし、それは思わぬところで、解かれてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!