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「俺の兄さんさ、今度、結婚するんだよ」
俺は二年前に鶴原と新里に言った。
「へえ、誰と?」
「この人だよ」
俺は写真を見せる。そのときの鶴原の表情は忘れられなかった。
「何て、名前?」
新里が訊く。それに答えたのは、鶴原だった。
「大塚綾さん」
それしか、彼には言えなかった。
「なんで、知っているんだよ?」
「以前、俺のクラスで教育実習をしていたんだ」
鶴原は泣きそうな表情をしていた。そのとき、俺は特に何も思わなかった。鶴原にとっては、感動が渦巻いて、よく分からない状態になっていた。しかし、倉橋にそれを言うことはできなかった。おお互いの関係を壊すのが怖かったからだ。
それから、何度か綾と会うことが鶴原はあったが、うまく話すことはできなかった。
そして、一ヶ月ほど前、俺の式神に三条がなった。何があって姿を消したのか、幾度となく、話そうとした。しかし、三条は意図的に、その話題を拒んでいるように感じられた。倉橋とは部活によって、再会したものの、この秘密は話せなかった。しかし、それに耐えられなくなって、今に至るという。
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