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どれくらいの時間が経っただろうか。三人はずっと話し続けた。
「そんなことが…」
俺は小さく呟く。
「今まで隠してて、本当にごめん」
鶴原、倉橋、三条の三人が同時に、頭を下げる。
「謝られてもな。教えてくれて、ありがとう。で、これからどうするんだ?」
「どういう偶然か、この学校にいる霊鬼は、四年前の霊鬼と同じなんだよ。だから、俺は絶対、あいつを倒さなくてはならない」
「そうか。いつだ?」
「学校で、荒っぽいことはしにくいからな。修学旅行の班別自主研修のときだ」
大変なことになった。新里が倉橋と告白するタイミングと重なってしまう。俺はとりあえず、三条と倉橋を外に呼び出す。
「どうしたんだよ? 二人とも」
「ちょっと、用があってな」
どうにか外に出て、言う。ここなら、鶴原に聞こえることはないだろう。
「どうすればいい? このままじゃ、美帆の告白が成立しない」
「私だって、分からないわ。でも、一つだけ方法があるわ」
「何?」
「私たちが霊鬼を倒すの」
「どうやって?」
「私たちには、式神がいるでしょう。琴音ちゃんは、あのときより、ずっと強い力を持っている。人間の私でさえ、分かるのだから、間違いないわ」
俺は三条を見る。
「はい。私は同じ間違いをしたくはありません。しかし、倉橋さん。あなたの提案には協力できません」
「どうして?」
「私は霊鬼を倒すことよりも、翔太さんを守ることを優先しなくてはなりませんから」
三条は表情を変えずに言う。倉橋はため息をこぼした。
「そう。二人が協力してくれないんなら、私と光里ちゃんだけで探すわ。そうすれば、二人に迷惑はかからない」
そう言った倉橋の視線に、背筋が寒くなった。彼女が三条を見る目には、激しい失望と軽蔑があったからだ。
「琴音ちゃんは、もう少し勇気があると思ったけど、結局、守ることしかしないのね」
三条は悔しそうな表情である。ここまで、はっきり言われると、腹が立つのも道理である。
「分かった。引き受けるよ」
これ以上、責められ続ける三条を黙って見ている訳にもいかない。
「やめてください。危険です」
「いい加減にしろ。このまま何もしないつもりか。昔のミスを取り返す気はないのか。ないんだったら…」
俺はここで息を吸って言う。
「俺の式神をやめろ。臆病者は必要ない」
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