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はっきり言って、これは賭けである。もし、本当に三条が俺の式神をやめれば、一番困るのは、俺に他ならない。
「分かりました。協力します」
三条は仕方なく、頷いた。俺は、内心ほっとする。だが、どうすればいいだろうか。
俺の心に生まれた疑問に三条が答える。
「陣を作って、封印する手があります。やりますか?」
「やるに決まってる。俺たちは何をすればいい?」
「この術を正しく使うには、式神本人と主が必要なんです。私も主の霊力を借りなければ、この術はできません」
「私は何をすれば?」
倉橋が訊く。
「倉橋さんと光里は霊鬼を陣のところまで、おびき寄せてもらえますか? 私と翔太さんはそこから離れることができないので。かなり危険ですが…」
「やります」
倉橋は強く言った。その意思に勝るものは、何もないように見える。
「じゃあ、そろそろ中に戻るか。遼も待ってるし」
俺はそう促して、部室に入る。
「遅かったな」
鶴原が言う。
「ごめん。ちょっと忙しくてな。ところで、唯。光里はどこにいるんだ?」
「ちょっと使いに出してるの。この部室にいる今なら、守護も退魔もいるから大丈夫だろうし」
その後は、他愛もないことを話した。明日の予定やつまらない愚痴などである。
「そうだ。倉橋さん、俺らの班に入らないか?」
鶴原が言った。
「嬉しいけど、私が入っていいのかな。だって、遼君とは知り合って、五年くらい経つけど、美帆ちゃんや翔太君とは、まだ少ししか時間経ってないし」
「時間なんて関係ないよ」
俺は呟く。
「翔太君…」
「一緒にいて、楽しいと思えれば、それでいいんだよ。俺と遼と美帆の関係だって、そんなものだよ。だから、時間の長さとかを気にする必要はないよ」
幼馴染み三人の関係が周囲からどう見えているのかは、分からない。とても仲が良く見えているのかもしれない。実際、それは事実だが、他の人が入ってきたとしても、大して変わることはないのだ。
「ありがとう。翔太君」
そう言った彼女の瞳がとても美しく見えた。それには、美しいとしか表現することができない。それと同時に、自分が本当に倉橋のことが好きなのだと実感する。
そして、気がつくと、口が勝手に動いていた。
「唯、お前が好きだ。付き合ってくれないか?」
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