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「それにしても、場所を考えるべきじゃなかったか? 幼馴染みや式神の前でよく告ったな」
鶴原が言う。
「ああ。感情がごちゃ混ぜになって、いつの間にか、言っていたんだよ」
「広めていいか?」
「やめろよ。恥ずかしいから、なあ、唯?」
彼女は首を横に振る。
「私は別に、構わないわ。翔太君みたいな人が彼氏だったら、誇らしいし、みんなに自慢できるわ。でも、他の人から嫉妬されちゃうかも」
「どういう意味だよ?」
倉橋は恥ずかしそうに下を向く。
「だって…、翔太君、独り占めできるの、私だけだから…」
俺の頭の中が再び、混乱してしまう。倉橋のキャラが変わり過ぎて、まったくついていかない。そして、鶴原と三条からの視線が痛い。
「翔太は女子から人気があるのか?」
鶴原が訊く。
「うん。遼君も格好いいけど、翔太君も優しいから、意外と、人気があるの。でも、一番好きなのは、私だから、誰にも渡さない」
幸せ過ぎる。幸せ過ぎて、それが完全に顔から出ている。三条はそんな俺を見て、小さく笑っている。
「唯、ありがとう」
「私はずっとあなたが好きなの。だから、式神だろうと、人間だろうとこの気持ちは止められない。そう言えば、私があのとき教室で何を言おうとしたか分かる?」
「いや、分からない。何を言うつもりだったんだ?」
「ずっと好きでしたって言うつもりだったの。あんな雰囲気だったら、少しは想像できたでしょ」
確かに、そう思ってはいた。霊鬼が倉橋を乗っ取ってしまったため、分からずじまいだったが。
「そうか。ありがとう」
俺はそうとだけ言う。幸せ過ぎて、うまく話せないのだ。
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