倉橋唯と告白

5/9
前へ
/61ページ
次へ
「それにしても、場所を考えるべきじゃなかったか? 幼馴染みや式神の前でよく告ったな」  鶴原が言う。 「ああ。感情がごちゃ混ぜになって、いつの間にか、言っていたんだよ」 「広めていいか?」 「やめろよ。恥ずかしいから、なあ、唯?」  彼女は首を横に振る。 「私は別に、構わないわ。翔太君みたいな人が彼氏だったら、誇らしいし、みんなに自慢できるわ。でも、他の人から嫉妬されちゃうかも」 「どういう意味だよ?」  倉橋は恥ずかしそうに下を向く。 「だって…、翔太君、独り占めできるの、私だけだから…」  俺の頭の中が再び、混乱してしまう。倉橋のキャラが変わり過ぎて、まったくついていかない。そして、鶴原と三条からの視線が痛い。 「翔太は女子から人気があるのか?」  鶴原が訊く。 「うん。遼君も格好いいけど、翔太君も優しいから、意外と、人気があるの。でも、一番好きなのは、私だから、誰にも渡さない」  幸せ過ぎる。幸せ過ぎて、それが完全に顔から出ている。三条はそんな俺を見て、小さく笑っている。 「唯、ありがとう」 「私はずっとあなたが好きなの。だから、式神だろうと、人間だろうとこの気持ちは止められない。そう言えば、私があのとき教室で何を言おうとしたか分かる?」 「いや、分からない。何を言うつもりだったんだ?」 「ずっと好きでしたって言うつもりだったの。あんな雰囲気だったら、少しは想像できたでしょ」  確かに、そう思ってはいた。霊鬼が倉橋を乗っ取ってしまったため、分からずじまいだったが。 「そうか。ありがとう」  俺はそうとだけ言う。幸せ過ぎて、うまく話せないのだ。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加