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「今日はもう解散だな」
鶴原が呟く。
「どうして?」
「決まってんだろ。部室でいちゃつかれんのは、見てられないからだよ」
少しイライラしているようだ。確かに、この光景は普段とは、正反対だ。普通は鶴原が女子と遊んで、それを俺が眺めているものだ。俺は何回も経験しているから慣れているが、彼にとっては、初めてに近いものであるから、少なからずショックを受けているだろう。
「悪いな、遼。美帆と帰ってもらえないか?」
そう言うと、鶴原はフンと鼻を鳴らして、答える。
「言われなくても、そのつもりだよ。じゃあな、二人とも。お幸せに」
彼はそう言い残して、出ていった。
三条もため息をつきながら言う。
「私も翔太さんの式神じゃなかったら、ここにはいません。もう少し、場所を考えた方がいいですよ」
そこまで言われると、反省してしまう。さすがに、浮かれ過ぎた。
「すまん、三条。確かに、人前ですることじゃないな」
俺、倉橋、三条の三人は部室を六時半過ぎに出た。学校の景色が輝いて見えるのは、気のせいではないだろう。
今さらだが、修学旅行まで、残り二週間。二週間経ったら、霊鬼を倒さなくてはならない。倒せなくても、隣にいる一番大事な人は守らなくてはならない。たとえ、自分が苦しむことになろうとも。
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