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矢のような早さで時間が過ぎ、修学旅行の当日となった。それまでの二週間、何をしていたか。俺は、三条と一緒に陣の練習をしたり、倉橋と小さなデートを積み重ねていた。もちろん、そのときの様子を言ってもいいのだが、どうも恥ずかしいので、省くことにする。
今は朝の十時過ぎ。俺はバスに揺られて、長野市を目指していた。俺だけでなく、クラス全員が暇をもて余していた。一時間ほどではあるが。
「それで、どっちが先に告ったの?」
新里が訊いてくる。俺は倉橋と付き合うことになった経緯を話していた。もちろん、式神や霊鬼のことは除いてだが。
「俺の方からだよ」
そう答えると、新里は非常に驚いたようだ。
「思ったより、大胆なのね」
「ただ単に、思ったことを言ってしまっただけだ。そんなに凄いことか?」
「うん。いい意味で翔太らしくない」
新里は言う。どこかで聞いたことのある言葉だ。横で爆睡する鶴原を見て、思い出す。冬霧の事件のときにも、同じことを言われたような気がする。
二人から同じことを言われるということは、俺は相当らしくない行動を取っているのだろう。それには、かなり三条が影響している。そんな彼女はカラス姿で、俺の旅行カバンに入っている。少し窮屈であるので、申し訳ない。
俺が答えずにいると、新里は、
「ねぇ、どんな風に告ればいいのかな?」
と訊いてきた。
「誰に?」
不意を打たれた俺は訊き返す。
「遼に決まっているじゃない。告白にもいろいろあるから、どうすればいいかな?」
「そうだな。俺一人で考えてもいい考えが出るとは思えないから、とりあえず、唯に電話するか」
俺は倉橋に電話をかける。彼女はクラスが違うため、別のバスに乗っている。
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