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「もしもし」
「翔太君、どうしたの?」
俺は倉橋の声が新里にも聞こえるようにする。
「美帆が遼に、どう告白するか訊いてきてさ。俺だけだと、何とも言えないからさ」
「なるほどね。遼君って、どんな場所が好きなの?」
倉橋が新里に訊く。
「うーん。どこが好きかは、まだ聞いてないけど、班別自主研修を勝手に、デートにしていいのかな」
「大丈夫。絶対にバレないようにしておくし」
ちなみに、倉橋は俺、新里、鶴原の班に所属している。
「ありがとうね。わざわざこんなことしてくれて」
「そんなこといいって、気にしなくて。高校二年生の修学旅行なんて、カップルだと班別自主研修がデートになるのは、当然のことだし。私と翔太君もそうするつもりだから、問題ないわ。ついでに、デートプラン作っておこうか? ネットにたくさんあるだろうし」
「本当にありがとう」
「礼はいいわ。翔太君、あなたはどうするの?」
「ヘ?」
俺は話をほとんど聞いていなかった。
「だから、デートプラン、準備してくれた?」
「いや、デートなんて聞いてないし」
俺が言うと、倉橋は呆れたようにため息をつく。
「しょうがないわね。私が立てておくから、ちゃんと楽しみにしててよね」
倉橋はそう言って、電話を切った。
「本当に仲が良いわね」
新里は呟いた。
「まあな。でも、お前のアドバイスのおかげで、告る勇気ができたんだよ。ありがとう」
「うーん。昔、好きだった人にそう言われるのは、少し微妙だけど、あなたが元気なら嬉しいわ」
そう言って、新里は微笑む。それを見て、美人だと思ってしまう。しかし、それを口には出せない。万が一、倉橋に聞かれてしまったら、大変なことになるからだ。
鶴原は小さく寝息を立てている。男の俺が見ても、思うことは一つもないのだが、新里は優しい目で、その寝顔を眺めている。こんな美男美女で幼馴染み同士のカップルでも、互いの気持ちに気づいていないというのは、意外なことである。自分の恋を成就してくれた新里のためにも、二人を支えようと強く思った。
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