521人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
「シャルロ王子様!」
今日もシャルロの名前を叫びながら宮殿内を捜し回っているのは、シャルロの教育係を任されているフランツ護衛官だ。
文官にも見える線の細い体つきだが、優れた剣術の使い手だ。
顔立ちは気品にあふれ、立ち振る舞いも優雅なフランツは、まるで貴公子のようだと侍女たちの間ではたいそう人気だった。
皆は知らぬがフランツは亡国の王子として生まれ、このヴィトロル王国に逃げてきた元王族である。
「シャルロ王子様!」
フランツが叫ぶ。
シャルロ王子は第三王子だ。
第一王子のシリル王子は国王陛下に似て文武両道。
第二王子のフェリクス王子は武芸は不得手だが、学問はたいそうできる。
第三王子のシャルロ王子だけが武芸も学問もできないのである。
そもそも本人にやる気がないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!