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私はブラウン管越しの彼を私の理想像と重ねていただけかもしれない。
そう思ったら知らずに泣けてきた。
ずっと好きだった。
だからこそ本気で悔しかった。
私は身体を起こして乱れたパジャマを直しながら。
「明日私が仕事へ出ていく時に出てって下さい。」
そう言うと立ち上がった。
すると彼は私の手首を思いっきり掴んだ。
「いたっ!ちょっ!」
「俺、、、言わなかった?帰る家が無いって。」
はぁ?!
この後に及んでまだそんな事を。
「鍵頂戴。」
そう言って私に右手を差し出した。
「ちょっとー!あなたねぇー!」
「芸能人なんて本当になるもんじゃ無いな。迷惑は掛けない。名前、、聞いてなかったな」
と、彼は言った。
凄く寂しそうな顔で。
「暁。私の名前は暁よ。アカツキって言う漢字一字で暁。」
さっきの顔とは全く違う彼の顔はテレビの向こうの彼にも見えた。
「暁かぁ、、いい名前じゃん。」
演技なのか、、、
それともこれが本当の悠なのか、、
私は分からずにいた。
「俺は悠でいいよ。テレビで見ている綾目悠とは別人だと思って。あそこに居る俺は俺じゃないから。」
そう言ってまたソファーに腰を下ろした。
「それから、、さっきはごめん。」
多くは彼は語らないけど、、有名になった事で彼は何か悲しみと心のどこかにある闇と戦ってる気がした。
これが本当の彼なら、、、
私は少しだけ様子を見ることにした。
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