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赤い傘に打ち付ける音がバシバシと今まで以上に強くなる頃には私は自宅のすぐ側まで来ていた。
歩いて1時間位。
元々田舎暮しだった私には歩く事なんて大したこは無かった。
人通りも少なく街灯だけがもの寂しげに輝いている。
そんな薄暗い道を私はひたすら歩いている。
その時!
私は1人の男性が目に映った。
この雨の中傘もささずに歩行者用の道を辿る鉄の白いパイプに両腕を掛けて背もたれていた。
何してるんだろう。
私は恐る恐るその人の横を通り過ぎようとしていた。
が、その瞬間私の心に電撃が走った。
その男性は私がずっとずっと好きだった男性。
綾目 悠だったからだ。
私は足を止め彼をジィーっと凝視した。
そんな私に彼が気づかない訳はない。
彼は上目使いで私を見上げると
「なに?」
と、聞いてきた。
私は思わず傘を差し出した。
「濡れますよ」
私の言葉に彼は小さく鼻で笑うとこう答えた。
「もう濡れてますけど」
ご最も。
私は返す言葉が無かった。
無言で彼に傘を差し出した。
その傘を彼はびしょ濡れた髪から滴る雨を避けるように細い目をして見てそのまま私に視線を移した。
「あんたが濡れるじゃん」
「私は大丈夫です」
「何で?」
「うちもうすぐそこですから」
そんな会話が静かに行われた後彼の口から私は耳を疑うような言葉を耳にする。
「丁度よかった。泊めてくんねぇ?帰る家が無いんだよね?」
冗談にしか聞こえないこの状況。
明らかに家が無いなんて嘘。
だってこの人は人気俳優。
あの綾目 悠なんだから。
けど、、、
私は正直こんな事絶対にもう2度と無い事だと言うことも分かってた。
前からずっとずっと好きだった綾目 悠がうちに来る?
こんな事って、、
私は少し悩んだ。
けど、やっぱりもう少しだけ、、、
夢でも良いからもう少しだけ綾目 悠の傍に居たかったのだ。
「良いですよ」
すると彼は私の傘に入り込んで彼が私の傘を握ってさしてくれた。
こうして私と悠は私の家に向かった。
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