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どのくらい私はシャワーを浴びていたんだろう。
今日起きた夢のような出来事に私は黄昏ていた。
フッと我に返った私は火照る身体を少しだけ温いお湯で冷ましてリビングへ戻った。
すると彼はパツパツの服で足を組んでソファーに座ってテレビを見ていた。
リビングの扉が開くと私の方に顔を向けた。
「少し冷めちゃったかもだけど…」
そう言ってテーブルの上を指さした。
そこにはもう一つマグカップがあってホットミルクが注がれていた。
「勝手に使っちゃったけどごめん」
私はもう一つのマグカップを手に取ると両手で包むように掴んだ。
「ありがとうございます」
そう言って絨毯の上に座った。
と、その時テーブルの上の写真立てに目を向け私は焦って隠そうとした。
「俺のファンの子だったんだね」
そう。
そこには綾目 悠の写真を入れてあったのだ。
私は何も言えず俯いている。
「ま、俺を知らない人は逆に少ないか。テレビ出てるし名前知らなくても顔くらいは知ってるって人多いだろうし」
そんな事ない。
名前だって皆知ってるだろうし。
綾目 悠と言ったら誰でも知ってるはず。
私は絨毯の上に伏せた写真立てに手をやると。
「綾目 悠と言ったら日本では誰もが知ってる俳優さんだと思います。演技はもちろんバライティ番組やミュージック番組にも今や引っ張りだこで。凄く素敵な男性だと思います。」
と、次の瞬間。
バサッ!
私は強い力で押し倒された。
私の目の前には後少し動いてしまうと唇が当たりそうな位近い彼がいた。
「俺が綾目悠だって分かってて声掛けたんだだろ?俺の事どれだけ好き?」
そう言うと彼は私に唇を重ねてきた。
優しく絡まる唇と舌が私の心臓を跳ね上がらせる。
そして静かに唇が少しだけ離れると。
「抱いて欲しかったんだろ?初めからそう言えばスグにでも抱いてったのに。」
と、薄笑いを見せた。
私は愕然とした。
そして心からこみ上げる怒りが私の手を動かした。
パシッ!
私はあの綾目悠の頬を平手打ちしていた。
「いてー」
彼はそう言うと私が叩いた左頬を抑えながら身体を起こした。
私は知らずに涙が溢れた。
「馬鹿にしないで!私は確かに綾目悠が凄い好きだし人生生きてきた中で本気で愛して他に男なんか作れない位に好きだけど!でも、あなたは私の知ってる綾目悠じゃない!あなたのファンだからって皆あなたに抱かれたいと思ってる人間ばかりじゃない!」
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