0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
それどころか、クスリ漬けにされていたにも関わらず、変な行動をしてしまうことがあった。そのため、何度も保護室に入れられた。
しかし、どんなに「あなたはこんなことをした、あんなことをした」と後から言われても、オレとしては「そんなことは絶対にしていないぞ」と言い張るしかなかった。まるで記憶がないが、オレがそんなことをするわけがないことばかりだったからだ。
女子更衣室を覗いたとか、女子トイレを覗いたとか。オレは断じてそんな人間ではない。
そんな濡れ衣を着せられながら、何か月かが過ぎ、だいぶ看護師や病棟にも慣れてきて、患者同士で運動をしあったり、本の話をしたりという中に入れてもらえるようになり、なごやかな日々を送れるようになった。
オレは彼らの間ではまだ有名人だった。一世を風靡した一発芸をせがまれることもあったが、オレはもちろんすべてきれいに断った。悪気のない彼らに怒りなどは湧かなかったが、今更無意味に見世物になる気はさらさらない。
オレは、ただ若いばかりの彼らに、人生の先輩格として話した。そんな毎日は、まあまあ楽しめるものだった。
ところが、ある日、いきなり鬱転した。
動けない。何もできない。ただ死にたい。そんな有り様になった。
最初のコメントを投稿しよう!